2019年8月25日日曜日

立川叔男 古楽器コンサート 9/15sun.



古楽器奏者・立川叔男さんの古楽器コンサートです。

日時:915日(日) 17時開場 1730分開演
楽器:19世紀ギター、ビウエラ、持って行ければシターン、間に合えば250年前のハープリュート
曲目: ヘンデルの主題による変奏曲(調子の良い鍛冶屋)M,ジュリアーニ
    夏の名残の薔薇変奏曲(庭の千草)  Y,メルツ
    ワルツ F,ショパン
    他
チャージ:投げ銭+1ドリンクオーダー

修復成った約200年前のギターに似合う『お爺さんの昔話』のような曲を、昔ながらのガット弦、及び新開発弦で弾きます(立川叔男)


立川さんについては、友人と出しているフリーペーパー「ぴざーらんど」のvol.1において触れたことがあります。立川さんがどんな人なのかを少しでもお伝えできればと思い添付いたします(長文ご注意です)。


*     *     *



「辞書化」
先日とあるお店で「アノニムラジオ」というイベントをやった。松本市にある友人のお店を使って展示をさせてもらった際の企画で、電波にはのらないがラジオ風の進行でトークやライブが展開される。そのなかで「音と言葉の学校」という教養番組風のコーナーを設けた。存在しない学問分野についてさも存在するかのように延々と専門的なことを喋りまくるタモリのコントをイメージモデルとした。アノニムラジオでは「音の辞書を作る」をテーマに、その試みを3年続けている「女流詩人」役の友人・山田さんと、「サックス奏者で大学助教授」役の友人・荒木さんが講師となり、私が司会を務めた。もちろん架空の設定である。
「音の辞書を作る」というのは次のようなやり方である。まず「女流詩人」が詩を朗読し、その詩の中から2つほどの単語(このときは名詞に限った)を選ぶ。そして、国語辞典で単語の意味を読み上げる。そのあと「サックス奏者で大学助教授」がその単語をサックスの音色であらわす。最後に朗読と音の演奏をコラボさせる。そこで奏でられた音が「言葉―音の辞書化」されていくという流れである。このコーナーの発案者である山田さんは普段「言葉」にも表情や温度みたいなものがあると感じており、それを「音」で表現したらおもしろいのではないか、もしかしたら言葉が通じない人(外国人とか、何かと分かり合えない人とか)にも通じるのではという考えから、このような内容と流れになった。この日は2つの詩が読み上げられ、4つの単語が音の辞書化された。真面目に淡々と進行した方が笑ってもらえるだろうとはわかってはいても、すっかり地が出てしまってへらへらと愉快な感じのコーナーになってしまった。
私はその時にはすっかり忘れていた。ラジオのイベントを終えた数日後、お店の常連さんである古楽器奏者の立川叔男さんが来店した。とても繊細かつ話がおもしろい人で、短編小説になりそうな話をいつも聞かせてくれる。久しぶりにお会いして、彼が以前話していたことをはっと思い出した。
立川さんは楽譜にかかれている表情記号が好きではないらしい。表情記号とは、楽譜に指示された「演奏の仕方」、「音のあり方」の表記のことである。例えば、「”f” フォルテ(強く)」とか「”legato” レガート(なめらかに)」とか。しかし、若き日にスペインに留学していた彼は自らの演奏の音楽世界とその記号がフィットしないことがあることに気がついた。人種の違いのせいなのかもしれない。ではどうしたか。「”decr.”デクレッシェンド(だんだん弱く)」のところには、「ふりかえるオルフェウス(今まさに暗闇に落ちてゆくエウリュディケ)」と書いた。ギリシャ神話のワンシーンで、オルフェウスの心の不安と悲しみが最高潮に達する場面。すなわち、ある表情記号を演奏するときにそういう演奏ができるような感情を喚起する場面や情景を選び取って書き込んでいたのである。その場面を思えば自ずと記号で示されているような演奏ができるようにしたのだ。これはまさしく、「記号―情景の辞書化」であろう。もちろん、その時々の気分や前後の演奏の感じから、記号とは真逆の演奏になってしまうこともあるらしい。でもあえて固定化しないことで生き生きとした演奏ができると思っているそうだ。
現在、立川さんは半身不随になりながらもギターを弾いている。「こんな体になってしまってはまともな演奏は出来ないけれど、心で弾くことはできる。こんな僕だからできる演奏があると思っている。そのときに、このやり方(記号―情景の辞書化)でやってきたことは非常に役に立ったんだよねえ」と言っている。
「辞書化」というのは何かを誰かと共有したいという試みであり、また、自分自身の社会化みたいなものなのかもしれない。とすれば、世の中には人間の数だけそれぞれの「辞書」がきっとあるような気がする。



<後日附記>
内容確認のため、この文章に出てくる二人に事前に原稿を送った。彼らから来た感想メールを追記します。
〇山田さんから来たメール
「『言葉以前のもの』に興味がある。
何かの感情のようなものがあって、それを伝えようとするときに
詩になったり、音楽になったり、絵になったりすると思うんだけど。
そのいろんなものに枝分かれする前のもの。」

〇立川さんから来たメール
音は ある概念 に置き換えて言語化しなければならないから そのマイナス面を逆手に取ったほうが記憶出来、イメージし易いと思いついたのが僕のやり方です。

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